移転価格税制の基礎知識!どのような制度なのか分かりやすく解説
海外に子会社などがある企業は、子会社と取引をすることもあると思いますが、そのような場合に適用されることがあるのが移転価格税制です。
こうした制度があることを知らないで商品の売買などをしていると、思わぬ高額の税金が課せられることもあります。
この制度に関する基礎知識を持っていれば、そうした失敗も避けることができるので、簡単なことだけでも知っておいた方がおすすめです。
税金に関する制度なので、一般の人にはわかりにくい部分もありますが、基本的にはそれほど難しい制度ではありません。
ここでは、移転価格税制がどのような制度なのか、わかりやすく解説します。
法律の内容に関する基礎知識
移転価格税制に関する基礎知識としてまず知っておいた方が良いのは、この制度の具体的な内容です。
この制度の対象となっているのは法人で、法人税に関連した制度です。
法人が国外関連者と取引をした時、その時の取引価格が独立企業間価格とは異なっている場合に適用されます。
独立企業間価格とは、互いに関連のない二つの企業が取引をする時の価格のことです。
法人が国外関連者と商品の売買をする時には、独立企業間価格とは大幅に異なった価格で売買がおこなわれることもあるために、このような制度が作られました。
企業が特別な価格で商品の売買をすることにはさまざまな理由があり、国外の税金を安くする目的でおこなわれることもあります。
国内に存在する企業の利益を海外の関連会社に移転させるために実施されることもあり、いずれの場合でも税務上の問題があるために、移転価格税制が適用されています。
この制度に関する規定がどのような法律に記載されているかも知っておいた方が良い基礎知識で、移転価格税制は、租税特別措置法という法律の第66条の4に規定されています。
租税特別措置法とは、国税に関連したさまざまな特例を定めている法律です。
国外関連者に関する基礎知識
移転価格税制のことを正しく理解する上で知っておいた方が良いのは、制度の対象となる国外関連者との取引です。
この場合の国外関連者とは、法令で定められた一定の基準を満たしている相手のことです。
具体的には、外国法人で、法人との間に、持株関係や実質的支配関係、もしくはそれらが連鎖する特別な関係のあるもののことを意味しています。
制度が適用される持株関係による国外関連者には2つの種類があり、その一つが親子関係です。
親子関係とは2つの法人のうちいずれかが、他方の法人の発行済み株式の50パーセント以上所有している関係のことです。
国内の法人が50パーセント以上所有している場合も、国外の法人が持っている場合も、それぞれ該当します。
株式の所有はその法人が直接所有している分だけでなく、間接的に所有している分も含まれます。
間接的な所有とは、法人の別の子会社がその法人の株式を所有しているような場合です。
法人が直接所有している株式と、間接的に保有している株式の割合が50パーセント以上になる場合にも、国外関連者に該当します。
兄弟関係にある場合にも国外関連者に当てはまりますが、これは同じ者により、2つの法人が発行済み株式の50パーセント以上をそれぞれ所有されている状態のことです。
移転価格税制に関するその他の基礎知識
移転価格税制を知るためには、課税の対象になる取引に関する基礎知識も知っておいたほうが最適です。
制度の対象となっているのは国外関連取引ですが、これは、法人がその国外関連者との間でおこなう棚卸資産などの資産を販売する行為のことです。
相手の資産を購入することも、国外関連取引に該当します。
その他には役務の提供も含まれ、その他の取引が含まれることもあります。
移転価格税制を知るためには、独立企業間価格に関する基礎知識も知っておいた方が良く、独立企業間価格には明確な定義があります。
独立企業間価格とは、国外関連者との取引が、その取引と同じような状況の下で、互いに関連しない法人の間でおこなわれた場合に成立すると認められる価格のことです。
独立企業間価格を決めるための方法は複数あるということも知っておいた方が良い基礎知識で、それらの方法をまとめて基本三法と呼んでいます。
基本三法は租税特別措置法第66条の4でそれぞれ規定されていて、その中の一つが独立価格比準法です。
その他に再販売価格基準法と原価基準法という方法で計算することも可能です。
それ以外にもこれらの基本三法に準ずるものとして、利益分割法と取引単位営業利益法などが規定されています。
まとめ
移転価格税制のことを理解するために知っておいた方が良い、基礎知識について紹介しました。
移転価格税制とは、法人が国外関連者と取引をした時に適用されることがある制度です。
売買などの価格が独立企業間価格とは異なっている場合に、独立企業間価格で取引されたものとみなして、課税される制度です。
制度の対象となる国外関連者に関する基礎知識も覚えておいた方が良く、親子関係や兄弟関係がある国外の法人などが該当します。
国外関連取引の基礎知識も重要で、棚卸資産の売買や資産の購入などが該当します。
基礎知識を一通り知っておけば、移転価格税制を理解しやすくなります。